「情報システム」は、福井県立大学・経済学部で田中求之が担当している、経済学部専門科目です。この授業は、私たちの身の回りにあふれている様々なデジタル情報機器(デジタル家電)について、原理・技術および業界の動向や商習慣(制度)などを取り上げて解説しています。この授業を通じて、情報のデジタル化の意味や意義、あるいは私たちの生活との関わり、さらには人間自体の情報処理(知覚・感覚)との繋がりなどを理解してもらいたいと考えています。

このページに記されているのは、講義のうち、原理・技術についての解説のために田中が作成した講義ノートです。授業では業界の現状、あるいはその時々のニュースの解説なども行っていますが、それらは載せていません(時間が経つと意味をなさないため)。

さらに、工学部向けの授業ではないため、正確さよりも分かりやすさを優先したものになっています。田中の理解が誤っていたりタイプミスをしている箇所も残っていると思います。授業の受講者以外の方がこのページをご覧になる際は、こうしたことを留意の上、お読みください。

携帯電話

ケータイの現在

契約者数の現状

2011年4月の時点で、携帯電話の契約総数は1億2千万ほど(社団法人 電気通信事業者協会の数値による)であり、日本の総人口(1億2761万)と比較すると、ケータイは、ほぼ一人に1台は普及したと言ってもよい状況にある。

LinkIcon携帯電話 契約者数の推移(2000-2012)
LinkIcon携帯電話 3大キャリアの月間新規増加数の推移(2009-2012)
LinkIcon携帯電話 3大キャリアの月MNP利用動向(2009-2012)
LinkIcon携帯電話 国内出荷台数の推移(2002-2011)

垂直統合

日本のケータイ業界の特徴として、通信会社(キャリアという)による垂直統合によってビジネスが行われているということがある。

各キャリアは、携帯電話の通信事業だけではなく、携帯電話の端末の開発や販売にもかかわって、それらをコントロールしている。携帯の製造会社は、ドコモならドコモ向けに作った端末をドコモに納入し、それをドコモが「ドコモのケータイ」として販売している。さらには、パケット通信を利用した様々なサービスもキャリアが運用している。

しかし、海外では、通信会社と携帯メーカーは分かれているのが、むしろ普通である。自分の好きなメーカーの端末を購入し、自分の好きな通信会社と利用契約を結ぶ、というようになっており、同じ機種を使いながら通信会社を変更したりできるようになっている(ただし、アップルが iPhone の販売で行ったような垂直統合的なビジネスの展開もないわけではない)。

日本がこのような垂直統合になっていることによって、様々な新しい技術がすぐに投入され、世界的にも類を見ないほどの高機能な携帯電話が普及することになったと言える。しかし、海外からは閉じた市場になってしまっており、日本をさしてガラパゴス(太平洋の孤島で、独自に進化した生物が多く棲息することで有名)と言うこともある。

しかし、日本国内の市場が飽和状態に達しつつあり、一方で高機能化した新規種開発のための費用も莫大になっていることから、端末の製造から撤退したり、携帯事業を合併する動きが出てきている。

2010年には、NEC、カシオ、日立の3社が携帯事業を統合して「NECカシオモバイルコミュニケーションズ」が誕生した。また、富士通と東芝も携帯事業の統合した。

2009年度の国内の出荷台数が 3142 万台なのに対して、2009年の全世界の携帯電話機出荷台数は11億3000万台である。日本国内だけを相手に商売するのがいかに狭い市場かわかると思う。

販売方式の変化

2008年になってケータイの端末販売の方式が大きく変わった。

●販売奨励金制度(インセンティブ制度)

先ほど垂直統合のところで述べたように、携帯電話機は、製造メーカーから直接に販売店へ卸されているのではない。まず、通信事業者(キャリアとも言う)に納入され、通信事業者から代理店へ卸され、そこから販売店へ卸されるという流通経路をたどる。だから、携帯電話機は、ドコモの●●とか au の●●といった、キャリアのブランドで販売されるわけである(最近では製造メーカーを表にだすことも増えてきたが)。

そして、販売代理店には、電話機を売るごとに、キャリアから各種の販売奨励金(インセンティブ、販売手数料ともいう)が支払われるようになっている。この販売奨励金によって、携帯を安く売ることが可能になっている。

携帯電話の各キャリアは、ユーザーの使用料金が収入になる。携帯電話が登場した当時は、少しでも自分の会社の回線を使用するユーザーを増やすことが重要であった。そのため、携帯電話機の販売においては、インセンティブ制度という仕組みを用いて、ユーザーは安く携帯を買うことができ、また販売店も利益が得られるようにしていた。インセンティブ制度によって、店頭価格が0円の携帯電話機の販売が可能になっていたのである。

インセンティブとは、もともと奨励や刺激、見返りといった意味の英語である(経営学ではやる気を引きだすために与えるものをインセンティブという)。携帯の販売においては、販売奨励金制度、もしくは代理店手数料といわれるものをさす。携帯電話会社と電話機の販売代理店のあいだでインセンティブ契約という契約が結ばれるのである(販売台数や契約内容等の条件があると言われている)。これによって、携帯電話が1台売れると、一定の手数料が携帯電話会社から販売代理店に支払われるのである。この手数料分を最初から電話機の価格から引いておくことによって、仕入れ値以下で販売しても販売会社は損をしないのだ。

たとえば1台につき3万円の手数料が払われることになっているとすると、仕入れ値が4万円の携帯を2万円(半額)で売ったとしても、1万円の収入があることになる。この制度のせいで、安い電話機が大量に売られ、ユーザーが増えていったわけだ。携帯電話会社は、インセンティブ制度で払った手数料は、契約後にユーザーが回線を使用した料金から回収するわけだ。

このように、ユーザー数を増やすことが、携帯電話会社の戦略になっていたために、携帯の端末をユーザーが安く買う事ができるのである。ただし、ユーザーは、安く買った分は通信料・パケット代と一緒に支払うという構図になっている。このため、通話料が割高で、また内訳が不透明になっているとの批判があった。

2007年3月の KDDI の決算報告によると、KDDI (au) の場合、1台につき平均で 37,000 円の販売コミッションが支払われていた。

●モバイルビジネス活性化プラン

こうした状況を変えるきっかけになったのが、2007年9月に総務省が発表した「モバイルビジネス活性化プラン」である。

モバイルビジネス研究会の報告書を受ける形で発表されたこのプランは、通信料金と端末価格の分離(分離プラン)の導入、販売奨励金の会計の明確化、SIM ロックの解除(これについては後で述べる)などを盛り込んである。基本的な方向として、垂直統合の縛りを緩めることを狙ったものだと言うことができるだろう。

また、このプランの公表の際に、総務省はキャリア各社に対して、携帯電話の端末価格と通信料金の区分の明確化を要求した。

これを受ける形で、キャリア各社は、販売制度と料金プランの見直しを行い、その結果、現在の割賦販売を中心にした販売方式に変わったのである。

●割賦販売

総務省の指導を受けて、各キャリアは、端末価格と利用料金を明確にわけ、また販売奨励金を廃止または縮小の方向に動いた。

その結果、利用料金は従来より安くなったが、端末価格は5万を超えるようになり、ユーザーからみた時に、新規購入や機種変更が割高に感じられるようになってしまった。

そこで各社は、端末代金を頭金なしで分割払いできる割賦販売を始めた。1〜2年間かけて端末代金を通信料と一緒に支払うようにしたのである。また、一定期間継続的に使用することを条件に各種の割引などのサービスを利用できるようにもした。

その結果、端末代金を支払い終えるまでは機種変更をしない(途中で解約すると未払い分を一気に支払う必要がある)ようになり、これが端末の買い替えサイクルの長期化を招いたのである。

このため、これまで短い間隔で機種変更を行っていたユーザーが機種変をしないようになり、それが売り上げの激減を招いたと言われている。

また、この販売方式の変更は、端末を製造するメーカーにとっても厳しい状況を招いた。これまでの販売奨励金制度のもとであれば、売れ残った機種(人気が出なかった機種など)は、販売奨励金を利用して店頭で安く販売する(いわゆる0円携帯のように)ことで、在庫を処分することができた。しかし、奨励金が無くなったことで、売れ残りの処分が難しくなり、売れる機種と売れない機種の差がはっきりとでるようになったわけである。

しかしながら、最近のスマートフォンの販売競争の加熱で、再び奨励金が増えてきている。特に、MNP による他社からの乗り換え客を獲得するために使用されているようだ。

ケータイの歴史

1979年
自動車電話 →6600cc 基本料金3万円(月額)、最短通話100円/分
1984年
全国広域サービス・自動車電話国際通話サービス開始
1985年
ショルダーホン発売
1987年
NTTが日本で初めて携帯電話のサービスを開始(第1世代) →アナログ式、500cc、電話機もレンタル方式、月額料金は2万3千円
1988年
携帯からの国際通話可能に
日本移動通信(IDO)がサービス開始
1989年
セルラーグループがサービスを開始
1993年
NTT移動通信網がPDCシステムによるデジタル方式(第2世代)のサービスを開始
携帯電話機の販売が自由化
1994年
PHS サービス開始
1996年
着メロ搭載の端末登場
1998年
cdmaOne のサービス開始(これ以降を2.5世代と呼ぶこともある)
1999年
iMode 開始 (やや遅れて EZweb とJ-スカイもサービス開始)
2000年
位置情報サービス提供開始
カメラ付き携帯電話登場(J-フォン、J-SH04 シャープ製)
携帯電話の契約数が固定電話を上回る
KDD, DDI, IDO が合併して KDDI へ(au の誕生)
2001年
ドコモがJava 対応サービス開始
ドコモが第3世代(3G)のサービス(FOMA)を開始
ボーダフォンが J-フォンを傘下におさめる(日本テレコムを買収)
au が GPS 搭載の端末を発売
2002年
au が CDMA2000 による3Gサービス開始
J-フォン(ボーダフォン)が W-CDMA のサービス開始
auが着うた開始
2003年
au が CDMA 1X WIN (3.5世代と呼ばれることもある)を開始し、パケット定額料金サービス開始
J-フォンがボーダフォンにブランド名を変更
2004年
ドコモがおサイフケータイを開始
auが着うたフル開始
2005年
ソフトバンクグループのBBモバイル、イー・アクセス子会社のイー・モバイル、アイピーモバイルの3社に新規参入の許可(BBモバイルは後に免許返上)
ボーダフォンが家族通話定額、LOVE定額を開始
2006年
ワンセグ放送開始
ドコモがクレジット事業に参入(DCMX)
ドコモが FOMA ハイスピード(HSDPA)開始
ボーダフォンからソフトバンクモバイルへ
ソフトバンクが 3G ハイスピード(HSPDA)開始
番号ポータビリティ開始(10月24日)
2007年
イー・モバイルがデータ通信で新規参入(13年ぶり)
ソフトバンクが新料金プラン「ホワイトプラン」(音声通話定額)導入
総務省「モバイルビジネス活性化プラン」
2008年
iPhone 3G がソフトバンクから発売
ワンセグのサイマル放送解除
au がじぶん銀行を開始
2009年
エイベックス通信放送(ドコモとエイベックスの合弁会社)が携帯専用のTV放送である BeeTV を開始
iPhone 3GS (iPhone OS 3) 発売
ドコモがケータイ送金を開始
ドコモから Google ケータイ(Android 搭載携帯)が発売
2010年
ソフトバンクが PDC (第2世代)を停波
iPad 発売、モバイルルーターの発売相次ぐ
総務省が「SIMロック解除に関するガイドライン」を発表
iPhone 4 発売
ドコモが3.9世代通信サービスXi(クロッシー)をLTE方式で提供開始
各社がスマートフォンを投入
2011年
ドコモが新機種の SIM ロック解除を可能に
ソフトバンクも SIM ロック解除対応機を発売
iPhone 4S 発売
au からも iPhone が発売
2012年
ドコモ、au も 2G 停波
iPhone 5

ケータイの技術

セルラーコンセプト

携帯電話では、通話やパケット通信は、基地局との電波による通信で行われる。一つの基地局の電波が届く範囲をセル(Cell)と呼ぶ。携帯電話は、全国を小さなセルに分けて通信を行うことで、限られた電波で多くの携帯電話が利用できるようになっている。

このように、サービス地域を多数の小ゾーンに分けてカバーする方法をセルラー方式(セルラーコンセプト)と呼ぶ。

NTTドコモの資料によると、2011年9月末の FOMA (3G) 用の基地局の数は、約6万5千局の野外基地局と、約3万局の屋内基地局が設置されているとのことである。

基地局ごとのセルを複数集め、全国を数十の地域に分けた位置登録エリア(ページングエリア、PA)が設定されており、電話機の呼び出し(これをページングという)は、この位置登録エリア単位で行われる。

携帯電話は、つねに自分がどの位置登録エリアにいるかを確認し、それをホームメモリー(ホームロケーションレジスター)と呼ばれる位置情報を管理するデータベースに通知し登録するようになっている。携帯の電源を入れたとき、あるいは移動によって位置登録エリアが変わった場合には、その都度、ホームメモリーに自分の位置を登録するようになっている。この仕組みによって、通信会社は、各電話機がどこの場所にいるかを把握して、呼び出しを行っているのである。

たとえばXがYの携帯電話に電話をかけたとしよう。まずXの携帯電話からの通話のリクエストを受けた通信システムは、ホームメモリーのデータを参照してYの電話がどの位置登録エリアにいるかを調べる。そして、Yの携帯のいる位置登録エリアのすべての基地局から、Yの電話に呼び出しをかける。すると、Yの電話機は、自分がどの基地局の範囲(セル)にいるのかを返事する。その返事を受けて、通信システムはYのいるセルの基地局を通じて、Yの電話機に通話の呼び出し(いわゆる着信)を行うのである。

このように、まず位置登録エリアで電話機に呼びかけを行って、どのセルにいるのかを返事させ、その返事を元に基地局を通じて実際の通話のための経路が確保されるということになっている。


●ケータイは通話しなくても電波を出す

携帯電話は、電源が入っている間は、常に自分が今どの位置登録エリアにいるかをモニターしており、変更があった場合には、先程述べたように、新しいエリアの登録の要求を発信する。つまり、通話していなくても位置情報の通信を行うために電波を送り出すことがある。

さらに、電話に呼び出しがきても通話しなかった場合であっても、実際の着信音が鳴り始める以前に、通信システムとの間で情報のやり取りのために電波での交信を行っている。

このように、携帯電話は、通話やパケット通信を行っていない時であっても、電波を出すことがあるのである。

携帯の発する電波が機器などに影響を与える場所(病院や航空機など)では、携帯をマナーモードにするのではなく、電源を切るように指示してある。それは、通話しなくても携帯が電波を発する可能性があるからなのである。電源を切るように指示があった場合には、ちゃんと電源を切るように。

なお、携帯電話は、常に着信があるかどうかをモニターしているのではない。→間欠受信方式:電話がかかっているかどうかを常に監視するのではなく、一定のタイミングで受信して調べている。各基地局ごとに携帯電話を呼びだすタイミングが決められており、携帯電話機は、このタイミングの時だけ受信して電話がかかってきているかどうかを調べている。他の時には受信回路の電源を落としている(もっとも、人間の感覚では常にチェックを行なっているように感じられる)。それによってバッテリを長く使うことができるわけである。

携帯の電話番号

携帯の電話番号は総務省が管理しており、キャリアごとに割り当てるようになっている。

090-CDEF-GHIJ という電話番号のうち、CDE の部分を見れば、どのキャリアの電話機に割り当てられたものかが分かるようになっている。

*各種の電話番号の割り当ての状況はLinkIcon総務省 電気通信番号指定状況で確認できる。

ただし、2006年に MNP(番号ポータビリティ制度)が導入され、同じ電話番号のままキャリアを変えることが可能になったため、あくまでもユーザーが最初に契約した電話機の情報ということになる。

現在、ケータイ向けの電話番号には 090 で始まるものと 080 で始まるものが割り当てられているが、2014年頃には枠が埋まる可能性があるため、PHS 向けに割り当てている 070 で始まる番号も携帯電話にも使えるようにすることを総務省が決めている。

3G(第3世代携帯)とは

契約者数の推移をみてもらえば分かるように、現在では、使用されている電話の90%以上が第3世代(3G)の携帯電話になった。3Gとは、名前の通り、技術的に3世代目にあたる携帯電話ということである。

第1世代は、アナログ方式による電話をさす。

第2世代は、音声をデジタル化して通信するようになった PDC (ドコモやソフトバンク)、あるいは cdmaOne (au)をさす。ドコモの場合、mova というサービス名を使っている。

すでに第2世代のサービスは停止している(au は2003年3月31日、ソフトバンクは 2010年3月31日、ドコモは2012年3月31日)。

日本の第2世代の PDC は、色々な経緯から、日本独自の方式となっている。海外では GSM と呼ばれる方式が主流になった。PDC の後から登場した au の cdmaOne を 2.5 世代と呼ぶこともある。

第3世代の規格は、当初は、世界の統一規格として定めようという目的で、国際電気通信連合で規格の策定が進められた。もともとは、規格を統一して世界中どこでも使える携帯電話を実現し(世界共通の通話周波数2GHz帯、UIMカードを採用して電話番号を替えずに国際ローミングを可能に)、同時に、高品質な会話とマルチメディアに対応できる高速データ通信を実現しようということで規格の策定が始まった。

2000年5月、結局、5つの方式(互換性はない)が勧告された。どの規格を採用するかは、国や通信事業者に任せられた。

この国際電気通信連合の勧告した規格 IMT-2000 (International Mobile Telecomunications 2000)にそったものを第3世代、3Gと呼ぶ。

日本ではW-CDMA(欧州と共同案)と cdma2000(米国モトローラやクァルコムが主導)の2つの方式を採用(電波の使い方が異なる)。当初は W-CDMA で一本化される可能性もあったが、au は cdma2000 を採用することになった。

au は cdmaOne への切り替えの後はしばらく低迷が続いていたのだが、3Gの CDMA200 への移行をスムーズに行うことができたために、結果的に、日本での3Gサービスをひっぱていくことになった。ドコモの3Gである FOMA は、開始は早かったが、基地局の整備の遅れや、電話機が重くてバッテリーが持たないなどの不評によって伸び悩んだ。ソフトバンクは、当時のボーダフォンが3Gへの投資を行わなかったこともあって3G比率は低いままだったのだが、ソフトバンクになってから積極的な投資と整備を行って急速に比率を伸ばした(ソフトバンクは現在は3Gのみ)。

●3.5G

3世代(3G)が定着した後、各キャリアは 3.5G と呼ばれるより高速のパケット通信の導入を行っている。

こちらでも先行しているのは au で、CDMA2000 1x EV-DO という規格の高速データ通信の方式を 1X WIN というサービス名で開始している。

これに対抗して、NTTドコモも HSPDA という通信方法の高速パケット通信のサービスを「FOMAハイスピード」という名称で2006年に投入した。ソフトバンクも同様(「3G ハイスピード」)。

au の 1X WIN もドコモの HSDPA も、下りのデータ転送(基地局から携帯端末へのデータ転送)の速度が3Gのものよりもかなり高速になっている。これによって、音楽や動画あるいはゲームなどを短時間でダウンロードすることが可能になった。ドコモは FOMA ハイスピードを使った動画サービス(動画チャンネル)を開始するなど、高速化したパケット通信を活用するサービスを各社が展開しはじめている。

●3.9G

2010年から、Long Term Evolution (LTE) という新しい規格の通信方式の携帯電話が投入された。最初に投入したのはドコモで、 Xi (クロッシー)というサービス名である。2011年中に県庁所在地をカバー、2012年中に主要都市をカバーする予定(Xi のサービスエリア外では FOMA で通話・通信が可能)。au やソフトバンクも LTE (FDD-LTE)のサービスを2012年度中に投入する(ソフトバンクはドコモやauとは規格が違う TDD-LTE はすでに開始している)。

この規格は高速パケット通信を実現するもので、現在の3Gとは全く異なる通信方式になる。原理的には光ケーブルでの通信並みの速度が出ると言われている。LTE のパケット通信で音声通話を行うことも可能といわれているが、現在は音声通話は既存の 3G の方式を使っている。2012年に総務省が音声通話でLTEを使う技術規準を策定したので、今後は音声も LTE に移行していくと思われる。

●4G

第4世代(4G)の規格の策定も進められている。すでに、世界無線通信会議(WRC)において、世界共通の周波数帯が採択された。また、LTEの後継規格であるLTE-AdvancedとWirelessMAN-Advanced(WiMAX 2)が標準化される見込み。実用化の時期は、2015年頃からといわれている。

4Gの特徴を簡単に言うと、超高速大容量のデータ通信を実現し、無線 LAN などの現在のワイヤレスのサービスと連携をはかるものである。携帯電話だけの規格というよりも、高速無線通信の規格と言う方がぴったりくるかもしれない(パソコンやデジタル機器での使用も想定されている)。

すでに実験も始まっているが、どのような形で商用化されサービスが導入されるかはまだ未定。

SIM カード

SIMカード(シムカード、Subscriber Identity Module Card)とは、GSM(欧米の第2世代)やW-CDMAなどの方式の携帯電話で使われているICカード(ドコモ=FOMAカード、au=auICカード、ソフトバンク=USIMカードと呼んでいる)である。。

3G携帯電話用のSIMカードは機能が拡張されており、UIMカードないしUSIMカードと言うが、互換性があるため一般にSIMカードと呼ばれている。

SIMカードには、IMSI(International Mobile Subscriber Identity)と呼ばれる固有の番号、携帯電話番号、電話帳、回線契約に関わる情報など、携帯電話を使用する際に必要となる情報が記録されている。原理的には、SIMカードを差し替えるだけで携帯電話機の機種変更ができるようになっている。

日本では、SIMカードの規格自体は、どのキャリアでも同じであるが、それぞれが自社の SIM カードしか利用できないように規制をかけてある。これを「SIM ロック」という。どこの携帯会社の SIM カードであっても利用できる携帯のことを「SIMロックフリー」と呼ぶことがある。国内でも海外メーカー製の SIM ロックフリーの携帯を販売しているところもある。また、モバイルルーターの中には SIM ロックフリーで販売されているものもある。

国内のキャリアは、垂直統合でビジネスを行っており、 SIM ロックをかけてある。言い方を変えると、SIM ロックがかかっているので、安く買えるようになっている。海外でも SIM ロックはかかっているが、一定期間の後に SIM ロックを解除することを義務づけている国もある。

この SIM ロックがあることが携帯端末機の競争を阻害しているとの声もあり、総務省の「モバイルビジネス活性化プラン」でも SIM ロックの解除が盛り込まれている。また2010年6月には、総務省が「SIMロック解除に関するガイドライン」を発表し、2011年4月以降に発売する機種でのロック解除をキャリアが自主的に取り組むように求めた。これをうけてドコモは2011年4月以降の機種についてはロック解除を可能にするとした。ただし、現時点では SIM ロック解除に対応した機種は少ない。またソフトバンクも2011年夏の新機種の中に SIM ロック解除対応の機種を投入している。

SIM カードの入ったケータイ電話(3Gの携帯)を持っている場合に気をつけないといけないのは、海外でケータイを紛失した際に、そのケータイの SIM カードが、SIM ロックフリーの携帯(海外では多く販売されている)で違法に利用されてしまう危険があるということだ。実際に被害も出ている。これを防ぐには、「PIN コード」という暗証番号を設定することで、他人には不正に利用されないようにロックする。

なお、ケータイの各端末(電話機)には、IMEI (International Mobile Equipment Identifier)と呼ばれる、その機種固有の番号が与えられている。つまり、ケータイ電話機は、それぞれが世界でその電話機しか持っていない番号をもっているのである。

この IMEI と、SIM カードに記録されている IMSI の二つは、通信時にセットになって通信会社に知らされるようになっている(通信網の利用のための認証手続きなどに必要)。通信会社(キャリア)は、どの利用者が、どの電話機を使って通信を行っているのかを把握できるようになっているわけである。

IMEI は、盗難などで不正に入手された電話機に利用を利用をブロックするために使われたりもする(海外ではすでに導入されおり、日本でもドコモが導入することを明らかにしている)。

仮想移動体通信事業者( MVNO )

物理的な回線網を自社ではもたず、他の事業者の回線を借りる形で通信サービスを行う事業者のことを、仮想移動体通信事業者(Mobile Virtual Network Operator = MVNO)という。物理的な施設などへの投資が不要な分、参入障壁が低く、またキャリアとは違ったサービス/価格のビジネスが可能になる。

日本ではデータ通信専用のサービス(パソコンに繋いでパケット通信を利用する)や、企業向けの回線ホールリセール(転売)などのサービスが行われている。

アマゾンの電子書籍端末のキンドルは MVNO によってユーザーが回線のことを気にすることなく、いつでもどこでも電子書籍をダウンロード(購入)できるようにしている。電話回線の契約や電話網の使用料金を払う必要もなく、ユーザーからはケータイのネットワークが「見えない」サービスになっている。

またトヨタのレクサスには車の位置を確認したり様々な問い合わせに24時間音声で対応するサービスが MVNO で実現している。ソフトバンクの回線を使った MVNO としてディズニー・ブランドの携帯も販売されている。

ただ、さまざまな MVNO が市場に参入することでモバイルビジネスが活性化されるといわれてきたが、今のところは、大きな動きになっているとは言いがたい。しかし、昨年あたりから SIM ロック解除の流れを見越して新たな動きが出てきている。

2010年に、日本通信(日本でのMVNO第一号、ブランド名は b-mobile)がドコモのMVNOとして音声通話対応のSIMカードの提供をはじめた。これは SIM ロックが解除された(あるいは SIM ロックフリーの)端末で使うものである。また、海外で売られているで SIM ロックフリーの iPhone (国内では iPhone はソフトバンクの独占販売で SIM ロックされている)を国内でドコモの通信網で使えるようにするmicroSIMの提供を始めている。

おサイフケータイ

ドコモが2004年に投入した、携帯電話で料金の支払いが行えるサービスである。これは携帯電話機にソニーが開発した非接触型の IC チップ(モバイル FeliCa)を組み込んだもので、支払い端末機と IC チップが非接触(ケーブルやアダプタで物理的に接続する必要がない)で通信を行うことで料金の支払いなどが行えるようになっている(首都圏の交通機関などで導入されている電子マネーは FeliCa をプラスティック・カードに埋め込んだものである)。

携帯電話に搭載した「ICアプリ」というソフトウェアで FeliCa チップを使ったサービスを提供するという仕組みになっているため、複数の業者のサービスを利用することが可能になっている。また残金の確認やチャージがケータイで行えるなど、プラスティック・カード(IC カード)の電子マネーよりも便利とされる。

おサイフケータイのサービスは、大きく2つに分かれる。一つは、あらかじめチャージした金額分を支払いに利用するというプリペイド型のサービス、もう一つが利用した分が後から口座から引き落とされるクレジットカード型のサービスである。ドコモは後者のクレジット決済サービスのビジネスに自ら乗り出し、自らがクレジット発行会社としてもビジネスを開始した(DCMX、DCMX mini)。クレジットカードの決済手数料を収益にすることをもくろんでいる。

現状では、色々なサービスが乱立して利用端末が統一化されていないことが問題になっている。

また、カード型の電子マネーにはないおサイフケータイならではの機能として、電子クーポンや電子チケットといった機能がある(ドコモの「トルカ」、au の「auケータイクーポン」)。

FeliCa が非接触での通信技術であることを利用して、ケータイ同士の無線LANや Bluetooth での接続のための設定をケータイ同士を接触させるだけで可能にする CROSS YOU というソフトウェアがソニーによって開発されている。このように、モバイル FeliCa を電子マネー以外の用途に用いるサービスも今後増えて行くと予想される。

GPS対応端末

GPS (Global Positioning System)(全地球測位システム)とは、地球の2万km 上空に配備された24個の人工衛星からの電波を使って、現在位置を測定するものである(24個のうちの4つの人工衛星の電波が受信できる状態であれば位置が割り出せる)。もともとは軍事目的のシステムだったが、現在ではカーナビに代表される民生利用が盛んになっている。

GPS対応端末というのは、この GPS で位置を割り出すための部品(GPS モジュール)を搭載した電話機である。

携帯電話の場合、どの基地局と通信を行っているかという情報によって、携帯電話の位置が大まかに割り出せるようにはなっている。しかし、地理的な距離ではなく電波の強さによって通信する基地局が決まるため、正確さにはかける。

携帯電話からの緊急通報(警察や消防への通報)の場合、どこから電話をかけているかという情報が正確に把握できることが重要になるのだが、通常のケータイでは難しい。そこで総務省は事業用電気通信設備規則を改正して、2007年4月以降に発売される第3世代携帯(3G)での対応を求めた。これをうけて、ドコモ、au、ソフトバンクは 「緊急情報位置通知」機能を導入した。

また、「緊急情報位置通知」対応端末から緊急通報(110番、118番、119番)を行うと、通報者の位置を GPSで測定し (GPS を積んでいない機種では、最寄りの基地局などから位置を割り出す)、それが警察、海上保安庁、消防に自動通報される仕組みも導入される。


これまでも GPS を搭載したケータイはあったのだが、キャリアによって対応には差があった。もっとも積極的に GPS の搭載を行ってきたのは au で、すでに出荷するほぼ全機種に GPS を搭載している(GPS端末の比率が2006年時点で 80% を越えているらしい)。そして、GPS を使った「EZナビウォーク」などのサービスを行っている。家族の位置を確認する「安心ナビ」も導入している。

au に遅れをとったドコモも、GPS内蔵の子供向け機種「キッズケータイ」を投入し、子供の居場所を確認できる「イマドコサービス」を開始するなど巻き返しにでている。

GPSそのものは通話/パケット通信を発声させないため、キャリアは GPS 機能とパケット通信を組み合わせたサービスを提供しなければ利益は生まない。GPS + パケット通信をつかった新しいサービスが、今後は他にも登場してくると思われる。

メールと SMS

ケータイで利用するメールは、日本ではパケット通信を使った、インターネットのメールと同じものが主流になっているが、海外では SMS (Short Message Service) と呼ばれる電話番号宛に短いテキストメッセージ(日本語で70文字程度まで)を送るものが主流である。パケット通信ではなく通話回線を使用してメッセージを送るようになっている。受信は無料で、送信の場合に一通につき3.15円かかる。

日本のケータイでも SMS を利用することはできるが、これまで同じキャリアの端末同士しかメッセージのやりとりができなかった。しかし、2011年7月13日より、キャリア各社の間で SMS の相互接続が行われ、使用しているキャリアに関係なく、電話番号が分かればメッセージをやりとりできるようになった。

なお、iPhone には SMS をマルチメディア版に拡張し、画像の添付や絵文字が使えるようにした MMS (Multimedia Message Service) が搭載されている。

スマートフォン

スマートフォンとは?

2008年に日本でもアップルの iPhone が発売され、これ以降、スマートフォン(スマホ)が注目を集めるようになってきた。スマートフォンについては明確な定義はないが、一般的に、以下のようなものがスマートフォンと呼ばれている。

1:次の OS を使用(グーグル の Android、アップルの iOS、マイクロソフトの Windows Phone)
2:音声通話が可能(iPad などのタブレットは入らない)
3:パソコンと同様の web ブラウザ(フルブラザ)が使える
4:アプリやソフトウェアの追加やカスタマイズが可能
5:アプリの開発仕様が公開されていること

日本のケータイは、機能だけを見れば海外のスマートフォンと同等かそれ以上の機能を搭載しているものも少なくないが、大きな違いとして、日本のケータイはその端末固有で完結した製品になっていることがある。一般にスマートフォント呼ばれるものは、パソコン同様に OS などのソフトウェアをアップデートして新機能の利用が可能になったり、メーカーやキャリアの開発者ではない人間が作成したアプリを自由に選んで使えるようになっている。

アップルが iPhone 向けのアプリのストア(App Store)を整備したことによって、世界中の多くの技術者がアプリを作成して配布・販売するようになった。この成功に刺激を受けて、スマートフォンがアプリを利用する端末としても注目されることになったのである。

また、Google がスマートフォン向けの OS である Android を発表し、これを使ったスマートフォンが各社から発表され販売されている。Android はオープンソースの OS であり、自由に利用することができるため、多くのメーカーが Android を使ったスマートフォンを発売している。Android もアプリを自由にダウンロードして使えるようになっている。

マイクロソフトは以前より携帯向けの Windows Mobile を発表しており、これを利用したケータイが国内でも販売されていたのだが、全く新しい OS として Windows Phone 7 を 2010 年に発表した。2012年には Windows Phone 8 が登場する予定。また、パソコン用の OS である Windows も2012年に Windows 8 が出荷されるが、Windows 8 と Windows Phone の両方で動かせるアプリの開発が容易になっているとのことだ。

現状

どのキャリアもスマートフォンをメインにおいている。2011年度の国内携帯端末の出荷台数のうち、56.6%がスマートフォンであった(2417万台)。今後はさらにスマートフォンの割合が増えると予想されている。

最近では、ワンセグやおサイフケータイなどの日本特有の機能を追加したスマートフォン(ガラスマと呼ばれることもある)も増えてきている。

世界的にもスマートフォンの販売台数は増えている。2012年第1四半期(1〜3月)の世界の販売台数の状況をみると、電話機全体で4億1911万台、そのうちスマートフォンが1億4440万台となっている。

世界の携帯電話全体のメーカー別販売台数は、1998年以来、フィンランドのノキアが首位だったのだが2位になり、スマートフォンの販売が好調な韓国のサムスンが1位になった。ノキアはスマートフォンの開発の遅れでシェアを落とし続けている。

影響および問題

●パケット通信(データ通信)の急増

スマートフォンではインターネットを利用した機能やサービスがよく使われるため、ユーザーが増えるにつれてパケット通信(データ通信)のトラフィックが増大している。これが通信速度の低下を招くようになった。このため、パケット通信を無線LAN(Wi-Fi)等に分散させる(無線LANが使える状況では、データ通信は携帯回線ではなく無線LANの方を利用する)対策(オフロード対策)がとられるようになっている。携帯各社は、自社のスマートフォンのユーザーが利用できる無線LANのアクセスポイントを増やしている。

ただ、無線LANのアクセスポイントが増加したことによって、電波の混信などの新たな問題も発生している

●マルウェア(ウイルス)の被害

パソコン同様に、マルウェア(ユーザーの個人情報を流出させるなど、ユーザーに害を与えることを目的に作られたソフトウェア)の被害にあう可能性もある。Androidマーケット(Android 向けのアプリのストア)にマルウェアが登場しており、セキュリティの確保も問題になっている。

各キャリアは、Android を使用しているスマートフォン向けに、安全が確認できたアプリを販売/配布するサイトやサービスを初めている。

●キャリアのサービスの変化

スマートフォンになると、ユーザーは電話機のキャリアの提供するもの以外のサービスや機能を自由に使える。つまり、これまでの垂直統合による囲い込み(通信だけでなくサービスやコンテンツもキャリアが提供する)がきかない。このため、たとえば着うたフルのような従来のケータイでしか利用できないサービスは売り上げが落ちている(このため国内の音楽配信の売り上げが減少した)。

こうしたなか、キャリア各社は、様々な定額制サービスを開始して、ユーザーの引き止め/囲い込みをはかっている。


●様々な影響

スマートフォンの普及が以下のような影響を与えていると言われている。

・スマートフォンにはカメラが搭載されている→コンパクトデジカメの需要減少
・スマートフォンの GPS と地図ソフトの連係→ナビの需要減少
・スマートフォンのゲームアプリ→ゲーム機の需要減少