「情報システム」は、福井県立大学・経済学部で田中求之が担当している、経済学部専門科目です。この授業は、私たちの身の回りにあふれている様々なデジタル情報機器(デジタル家電)について、原理・技術および業界の動向や商習慣(制度)などを取り上げて解説しています。この授業を通じて、情報のデジタル化の意味や意義、あるいは私たちの生活との関わり、さらには人間自体の情報処理(知覚・感覚)との繋がりなどを理解してもらいたいと考えています。

このページに記されているのは、講義のうち、原理・技術についての解説のために田中が作成した講義ノートです。授業では業界の現状、あるいはその時々のニュースの解説なども行っていますが、それらは載せていません(時間が経つと意味をなさないため)。

さらに、工学部向けの授業ではないため、正確さよりも分かりやすさを優先したものになっています。田中の理解が誤っていたりタイプミスをしている箇所も残っていると思います。授業の受講者以外の方がこのページをご覧になる際は、こうしたことを留意の上、お読みください。

画像データとデジタルカメラ

デジタル画像の基礎知識

ベクターイメージとビットマップ画像

コンピュータで扱うデジタルの画像は、絵の表現形式(どのように画像をデータ化するか)の違いから、ベクター画像(ベクターイメージ、Vector Image)とビットマップ画像(Bitmap Image)に分かれる。

ベクターイメージは、絵を構成する物体をベクトルによって表現したものである。ベクトルで表現されたオブジェクトの集合体として一枚の絵を構成する。簡単に言うと、絵に描かれている個々の物体の描き方をデータ化したものだと思っておけばいいだろう。ドロー形式と呼ばれることもある。ソフトウェアの名前が「○○ドロー」になっているものは、このベクターイメージを扱うソフトである。また、有名なものでは、イラストレーターも、基本はベクターイメージを扱うソフトである。

ビットマップ画像は、小さな点の集まりとして絵を構成する。ピクセルマップ画像、あるいはラスターイメージと呼ばれることもある。「○○ペイント」のような名前のソフトウェアは主としてビットマップ画像を扱うものである。有名なところではフォトショップがある。

デジカメで撮影した画像は、ビットマップ形式の画像データとして記録される。

この講義では、ビットマップ形式のデジタル画像を取り上げる。以下で画像といったときには、特に断りのない場合は、ビットマップ画像をさす。

画素 pixel

ビットマップ形式の画像を構成している一つ一つの小さな点のことを画素という。画像を構成するデータの最小単位である。つまり、ビットマップ画像とは、画素の集合として絵を構成するものだと言える。

画像の大きさ(絵の大きさ)は画像を構成している画素の数によって表現される。ただし、画像の場合には、総数ではなく、横と縦のそれぞれの画素数のかけ算式によって表現される。単位として使われるのはピクセルであるが、これは画素の英語(Picture Element)を省略したものである。

たとえば、「240×320 ピクセルの画像」というのは、横が 240 ピクセル(画素)、縦が 320 ピクセル(画素)、全体で 76,800 画素からなる画像ということである。

解像度

先ほど、デジタル画像のサイズは横と縦の画素数の積の形で表現されると述べた。つまり、デジタル画像のサイズと言われているものは、その画像を構成している画素数の情報であって、その画像が、実際にどれくらいの大きさで表示/印刷されるかという情報ではないことに注意が必要である。

デジタル画像を表示/印刷したときに、それがどのくらいの大きさで表示/印刷されるかは、表示/印刷に使用する機器が、画素をどれくらいの大きさで表現しているかに依存する。個々の機器がどの程度の大きさで画素を表示するのかを表す数値が解像度である。

解像度は、通常、1インチ(=2.54 cm)にどれだけの点(ドット)を並べるか、という数値になっている。単位は dpi (dot per inch = インチ当たりの点)。

同じサイズ(画素数)の画像であっても、解像度の大きな機器(つまり個々の画素の表示は小さい)であれば小さく表示/印刷されるし、解像度の小さな(低い)機器であれば、大きく表示されることになる。

先ほどの240×320 ピクセルの画像を例にして説明する。この画像を解像度が 80dpi のモニターで表示すると、横は 240/80=3 インチ、つまり 7.62cm 。縦は 320/80=4 インチ、つまり 10.16cm ということになる。

また、240×320ピクセルの画像を携帯電話で表示したとき、横が 3.4cm で表示されたならば、インチに直すと 3.4/2.54=1.34インチで表示されたことになるので、解像度は 240/1.34 = 179.1 dpi ということになる( 180dpi の液晶画面を使っていると想定される)。

このように、デジタル画像を扱う場合には、画像自体のサイズ(画素数)と、表示/印刷に用いる機器の解像度の2つを頭に入れておく必要がある。

なお、TVモニターの場合は、解像度は一画面を構成する画素数を指す。同じ言葉が違ったものを指しているので注意してほしい。

色と色覚

色の情報

画像を構成する個々の画素は、その画素の色の情報をもっている。デジタル画像の場合、光の3原色である赤・緑・青(RGB)のそれぞれの色の成分の強さとして色の情報が記録されている。3つの成分がすべて最大の場合に白、すべての成分がない場合に黒になる。

現在、一般的には、それぞれの色成分に 8bit を割り当てるのが普通である。8bit 分の容量で表現できる値は 2 の 8 乗分、つまり 256 段階の値である。これが3つの成分のそれぞれの値の幅になるので、一つの画素で表現できる色は 256×256×256=16777216 色、約1677万色、ということである。

色とは何か?

ここで色というものについて確認しておくことにする。

色とは、可視光線の組成(波長)の違いを質の違いとして視覚がとらえたもの(色覚)である。

物の色とは、その物体にあたった光線のうち、特定の波長の光が反射され(それ以外のものは吸収される)、それが人間の目に届く。その反射されてきた波長の光が、人間にはその物体の色として認識される。緑の葉っぱは、緑として知覚される波長の光のみを反射しているわけである。

光は、電波と同じ電磁波である。電磁波のうちの特定の波長のものが、人間の目には光として知覚される(可視光線)。そして、電磁波の波長の長さの違いが色の違いとして人間には感じられるようになっているのである。だから、正確に言うならば、光やモノに色がついているのではなく、光を受けた人間の感覚器が「色を作り出している」のである。光の波長の違いや混ざり具合を、最終的には脳が色としてとらえている。

つまり、色は[光源+視覚+物体の反射/透過]の3つの要素の組み合わせで成り立つ感覚なのである(物体色の3要素)。

なぜこの周波数の電磁波を光として知覚するかといえば、宇宙から届く電磁波のうち、地球の大気は、可視光と電波及び赤外線の一部の波長しか通さないため(大気の窓、光の窓)、知覚対象になりうるのが、この周波数であったと考えられている。

人間が光として知覚できる可視光は、波長が約380nm~780nmの範囲。波長によって、以下のような色として感じるようになっている(周波数だと、405 - 790 THzの範囲)

  • 赤:610-780nm
  • 橙:590-610nm
  • 黄:570-590nm
  • 緑:500-570nm
  • 青:460-500nm
  • 藍:430-460nm
  • 紫:380-430nm

*1mm = 1000 μm = 1000000 nm (1nm は百万分の1ミリ)

赤より波長が長い光を赤外線(780nm以上 100μm)、紫より波長が短い光を紫外線(380nm以下)と呼ぶ。どちらも人間の目には光として見えない。赤外線は英語では infrared (infra=下部、red=赤)で IR と省略される。紫外線は ultraviolet (ultra=超、violet=紫)で UV と省略される。

太陽光(白色光)にはすべての成分が含まれているため、太陽光をプリズムに通して分光させると上記の7色が連続したスペクトルであらわれる。また、空気中の水分によって光が分光することで虹が生じるのだが、虹の7色も上記の色になるわけである。

光は真空中ではすべての周波数(波長)が同じ速度だが、ガラスなどの物質中では周波数(波長)によって速度が変わる(周波数が高い/波長が短いものほど遅くなる)。このためプリズムなどで光が分光、分散する。

なお、虹を何色とするかは地域によって異なるが、虹を7色としたのはニュートンで、それが日本でも定着したと言われている。

なぜ光の3原色なのか?

ここで先ほどの光の3原色のことを考えてほしい。デジタル画像では、色の情報を光の3原色のそれぞれの成分の強さとしてデータ化するのであった。つまり、すべての色を3つの色の成分の合成としてとらえるわけである。たとえば、紫は、赤と青を混ぜると作れる。我々は、それを何の不思議にも思わない。

しかし、色の違いは波長の違いである。紫の波長は可視光線では一番短い波長である。一番長い波長と中間くらいの波長の光を混ぜると、なぜ一番短い波長の色になるのか? その「おかしさ」は、音におき直して考えてもらうと分かりやすいだろう。音の高さは、音の波長の違いである。低い音(波長が長い音)と中間の音を混ぜると高い音(波長が短い音)が聴こえるだろうか? そんなことはありえない。二つの音が聴こえるだけで、一つの短い音が聴こえることはない。

しかし、光の場合は、長い波長の光(赤)と、中間の波長の光(青)を混ぜると、短い波長の光の色(紫)になる。

その理由は、人間の色覚の特性にある。

人間の色覚

人間の目の中には網膜があり、その網膜でとらえた光の情報が視覚になる。

人間の色覚(色の感覚)は、生理学的には、網膜内にある3種類の錐体(すいたい)細胞が吸収する可視光線の割合によって生み出されている。錐体細胞はL、M、Sの3種類があり、大まかには、それぞれが赤、緑、青に反応する。

L錐体:波長が長い(Long)の光に反応→500〜650 nm の光=赤
M錐体:波長が中間(Medium)の光に反応→450〜600 nm の光=緑
S錐体:波長が短い(Short)の光に反応→400〜500 nm の光=青

原理的には2つの錐体細胞で色の認識は可能である。人間の場合は、赤に反応するL錐体から少しだけ特性が異なったM錐体があることによって、緑~赤の範囲の識別能力が高まっている(相対的に青~緑の識別能力が低い)。

なお網膜には錐体細胞の他に桿体(かんたい)細胞というものがある。錐体細胞は感度が低いので、光が弱い(暗くなる)と色が感じられなくなる(暗いところでは物の色がわかりにくくなる)。桿体細胞は感度は高いが色情報はもたらさない(なので暗くても、物の輪郭はわかる)。

人間の色覚が色を認識する場合、光のすべての波長に直接反応するのではなく、錐体細胞に含まれる三つの色素が色を吸収する割合をはかっている。さまざまな波長の光を、3色の強弱として捉えているわけである。そのため、独立した複数の色を合成することで、人間に別の色を感じさせることができるのである。

黄色の波長の光と、赤色と緑色の光を合成した光とが、同じ色に知覚されるわけである。人間の目は、この二つの光(黄色の波長だけの光と、赤と緑の合成された光)の違いを区別できない。

このように、人間は3種の錐体細胞の反応の割合で色を感じているので、光の3原色の合成によって、さまざまな色を「感じさせる」ことができるのである。他の動物では錐体細胞の種類が2種類(ほ乳類)や4種類(魚類、両生類、は虫類、鳥類)のものがあり、それらの動物にとっては、色の表現は2原色や4原色ということになる。

人間は3つの錐体細胞の反応で光を感じているわけだが、3種類の錐体細胞が同じ割合ではなく、青に反応する錐体の割合が小さい(平均で赤錐体が 60%、緑錐体が 30%、青錐体が 10%で、赤錐体と緑錐体の比が 2:1 と言われているが、個人差も大きいらしい)。また、青は波長が短いためレンズで強く曲がるため、緑や赤とは焦点位置がずれる(ピントがずれる)状態になるらしい。これらの理由で、青に対する反応は弱いものになっているという。3つの錐体の割合にも偏りがあることも、人間の色の捉え方に影響している。

このように、人間の色覚は、自然界の光の状態をそのまま捉えたものではなく、あくまでも、感覚器官を通して感じられた違いなのである。

比視感度

人間の目の感度は波長によって異なり、明るい所では555nm(ナノメートル)付近の光を最も強く感じ、暗いところでは507nm付近の光を最も強く感じるとされる(どちらも緑)。つまり、物理的な光の強さは同じであっても、波長が違うと明るさも違うということである。

人間の目が、光の各波長ごとの明るさを感じる強さを数値で表わしたものを比視感度(ひしかんど)といい、人間の目が波長ごとに光を感じ取る強さであり、また、波長ごとに光を感じ取る強さが異なるという現象のことを視感度という。

心理的補正とホワイトバランス

人間の色覚には、心理的な補正も加わる。光源の色度(色温度)の違いは補正されて、昼と朝夕では日光の波長分布が違うにもかかわらず、物体の色は同じに見える(朝夕は、青成分が減って、赤みが強まった光になる)。また蛍光灯の下でも白く見える。このような心理的な補正が働く(「色の恒常性」:人がものを見る際、無意識に光の影響を補正して色を見ようとする視覚の働き)。

*色温度:黒体(黒い物体)を熱していくと、温度によって様々な色の光を放射するようになる。理想的な黒体を想定して、その黒体が発する光の色ごとの温度で、光源の色を表現した物が色温度と呼ばれ、K (ケルビン)という単位(絶対温度の単位)で示される。寒色系は色温度が高く、暖色系ほど色温度は低くなる。朝日や夕日が2000K、昼の太陽が5000K-6000Kという値になる。

つまり、白いものは、それにあたっている光の色みが違っていても、白として認識し記憶するわけである。そのため、物理的な光の波長をそのまま記録し表示した場合、人間には「色がおかしい」と感じられるという現象が起きる。蛍光灯の光のもとで撮った白いシャツは、物理的には青みがかった白の光を反射しているのであるが、青みのない白いシャツに「映っている」写真の方が、「正しい」と感じるのが普通なのである。

このため、デジカメでは、ホワイトバランス(白色補正)機能によって、色温度が異なる光源でも、白を白に映すように補正するようになっている。

色の合成

先ほどから述べているように、デジタル画像の場合は、光の3原色の合成で色を表現する。このような色のついた光の合成で色を作り出す場合を、加法混色という。

テレビやパソコンのモニターなど、自らが光るものを用いて色を表現する場合には、この加法混色、つまりは光の3原色の合成という方法が用いられる。

一方、印刷物の場合は、太陽やライトなどの他から発せられた光の反射が目に届くわけであるから、色を表現する場合、反射する光が表現する色の光になる必要がある。

たとえば、緑の文字を印刷したいならば、すべての色成分を含む太陽光から、緑だけを反射させる(=緑以外の成分を反射させない)ようにするわけである。つまり、必要な色以外を減らす=吸収することで色を表現する。このような色の合成を減法混色という。

白の上に特定の波長を吸収する色を塗り重ねることで、必要な波長の光だけが反射するようにする。合成の元になる色は、色の3原色と呼ばれるシアン、マゼンダ、イエローを用いる。より自然な黒を表現するために黒色を追加したものがCMYKと呼ばれる。市販のカラープリンターのインクはこの4色が基本になっている(この4色に特別な色を追加して表現力を増しているものもある)。

  • シアン(青緑)赤を吸収
  • マゼンダ(深紅):緑を吸収
  • イエロー(黄):青を吸収

例えば、印刷物で青を表現したい場合には、それ以外の色を吸収することになるので、シアンとマゼンダを混ぜるわけである。

デジカメで撮影した写真を印刷する場合、パソコンなどの内部で、光の3原色で表現された色の情報を、印刷用の CMYK で表現された情報に変換してから、プリンターに命令が送られるようになっている。

色の3属性

・色相(色の様相) →グレースケールは無彩色(色相がなく、彩度は0)

・彩度:色の鮮やかさ

・明度:色の明るさ

デジタルカメラ

仕組み

デジタルカメラ(デジカメ、正式名称はデジタルスチルカメラ)は、従来のカメラのフィルムの替わりに、デジタル信号として画像を記録するカメラである。

日本写真機工業界ではデジカメを次のように定義している:「レンズと撮像素子を備えていて、撮像された静止画像データを、内蔵、又は、取り外し可能なデジタル記録媒体に記録することを主たる機能とするカメラ」

レンズから入ってきた光(画像)のデータは、撮像素子と呼ばれる部品の上の、受光素子(フォトダイオードが使われる)という半導体によって電気信号に変換される。簡単な処理の流れは以下のようになっている。

[受光素子]→[アナログ-デジタル変換]→[データ補間処理]→[画像処理]→[圧縮処理]→[メディア保存]→[カメラの液晶画面に表示]

撮像素子と画素数

撮像素子の表面にはびっしりと小さな受光素子が並んでいる。つまり、1枚の画像を、小さな点の集まりとして電気に変換するようになっている。一つの撮像素子にどれだけの受光素子が並んでいるかを表したのが、いわゆるデジカメの画素数である。

先ほど述べたように、デジタル画像では、画像を構成している画素の数を画素数という。しかし、デジカメの場合は、撮像素子を構成している受光素子の数を画素数という。ただし、正確には、デジカメの画素数には以下の3種類があり、それぞれの数値が異る。以下の表の数値例は、Canon Kiss Digital の場合のものである。

  • 総画素数  撮像素子の画素数       650万(3152×2068)
  • 有効画素数 撮影に実際に用いられる画素数 630万(3088×2056)
  • 出力画素数 記録される画像の画素数    629万(3072×2048)

通常、デジカメのカタログなどで言われる画素数は、特に断りがないかぎり、有効画素数である。

アスペクト比

デジカメでは撮影した写真を画像ファイルの形で記録するわけだが、この画像ファイルの横と縦のサイズ(ピクセル数)の比のことをアスペクト比という。以前はカメラメーカーの作るデジカメは、35mmフィルムのアスペクト比と同じ3:2の画像ファイルを作成するのに対して、家電系メーカーのデジカメは、パソコンやテレビの画面の比率と同じ4:3の画像ファイルを作成する傾向にあった。最近では、ハイビジョン放送の画面のアスペクトに合わせた16:9や、ブログで使われる1:1のアスペクトで記録するものも出てきている。通常、デジカメの設定で記録する画像のアスペクト比が設定できるようになっている(ただし、アスペクト比という項目ではなく、記録画像の画素数の設定になっているのが普通)。

補間処理

もし、個々の受光素子が、デジタル画像の一つの画素の信号を生み出す(つまり、受光素子の画素と画像の画素が1対1で対応)のであれば、単純に、デジカメの有効画素数は、そのデジカメで撮影できる画像の(最大の)画素数ということになる。しかし、話はそんなに単純ではないのだ。

デジタル画像の画素の一つ一つはカラー情報を持つ必要がある。先に述べたように、RGB の3色の成分の強さを数値化した情報としてカラー情報を持つわけである。しかし、撮像素子の個々の受光素子は、色の情報を認識(変換)できない。光の強さを電気化することしかできないのである。

つまり、撮像素子で受け取った光(画像)を単純に電子化すると、白黒の画像データしか得られないわけである。

そこで、撮像素子上の個々の受光素子の前にカラーのフィルターを置いて、一つ一つの受光素子が光=画像の中の特定の色の成分の強さを電子化するようになっている。つまり、赤、緑、青のカラーフィルターを取り付けた受光素子が並んでいて、3つの素子の情報を合わせてはじめて一つのカラー情報ができあがるようになっている。以下のような感じで4個が一組になったものがびっしりと並んでいるのである。

ccd.gif

緑が2つあるのは、緑の信号の強さが、人間の目にとっての明るさ(輝度)の情報として一番適しているから(先に述べたように、人間は、緑に対する感度が高い)。

いずれにせよ、このままでは、各画素は、特定の色の強さの信号=情報しか持っていないわけで、画像データにはならない。4つの信号を合わせて一つの画素の信号にしてしまうと、原理的に考えると、実際にカラーの点の情報として得られる情報の量は、 素子数=画素数の4分の1ということになってしまう。

そこで、デジカメでは、撮像素子で受け取った信号に演算処理を施して、カラー情報に変換している。それが先ほどのデジカメの仕組みのところで出てきたデータ補間処理である。

上の図の赤の画素は、赤の色情報しか直接は得られない。そこで、デジカメの内部で、両隣の緑の画素の情報をもとに緑の強さを推測し、斜めの上下の青の画素の情報をもとに青の強さを推測し、その3つ(緑の生データ、赤の推測データ、青の推測データ)を合わせたものが、この赤の画素の位置のカラー情報として扱われるわけである。たとえば、両隣の緑の情報が 100 だったら、間にある画素の部分も 100 だろうと予想して、カラー情報の赤成分は 100 とするといった処理を行うのである。

この補間処理というのは、いってしまえば、周りに合わせて色を推定するというものなので、もし被写体が非常に目の細かい複雑な色合いをしたものだった場合には、実際の色と、カメラが推定した色が食い違うということが起こりえる。そうしたことを少しでも防ぐために、実は、撮像素子の前にローパスフィルタというものを置いて、わざと画像を少しにじませるようになっている(画像処理の段階でにじみを取り除く処理を行う)。

このように、デジカメにおいては、撮像素子で受け取ったデータを演算処理しなければならないようになっている。演算処理が画像の質が決まる上で重要な役割を担うのである。もちろん、撮像素子の画素数が多いほど精密な画像のデータが得られるわけであるから、一般的には画素数が多いほど高機能であると考えて良いが、デジカメの性能は画素数だけで決まるものではないことは覚えておいた方がよい。

なお、デジタルビデオカメラなどでは、レンズから入ってきた光をミラーで3原色に分解して、それぞれの色の成分ごとに一つの CCD (撮像素子)を使うという、3CCD 方式をとっているものもある。この方式にすると機器のサイズ(特に奥行き)が大きくなるため、デジカメでは 3CCD 方式ではなく、1つの CCD で補完処理を行うのが普通である。

また、デジカメの中でも、シグマという会社が発売しているものは、FOVEON X3 ダイレクトイメージセンサーと呼ばれる撮像素子を搭載し、一点ですべてのカラー情報を取得できるものになっている(3 層構造による垂直色分解方式といって、それぞれの色情報を層ごとに取り込むようになっているようだ)。

現像処理

補間処理以外にも、撮像素子で得られたデータをデジタル画像データにするために、色々な処理が行われる。先に述べたホワイトバランスの調整などがその一例である。人間の目で見た時に、「正しく」撮影されていると感じられる画像になるように調整が行われるのである。

レンズからの生データを記録したものを、写真に仕立てるという、フィルムカメラの場合の現像に相当する部分の処理なので、現像処理と呼ばれる。この現像処理の部分がメーカーによって異るので、同じ撮像素子を使っていても、メーカーによって画像の色合いなどに違いがでるのである。

プロの写真家のように自分で絵の仕上がりをコントロールした場合には、後に説明する RAW 形式で写真を保存し、パソコンで自分で現像処理を行えば、自分の好きなように絵を作ることができる。

最近のデジカメでは、シーン設定や仕上がり設定といった項目として、この現像処理の具合を調整できるものも増えている(シーン設定の場合は、シャッター速度や絞りといった撮影時の機械的な設定と連動するのが普通)。

記録メディア

デジカメは画像データの記録にはメモリーカードを使う。メモリーカードは、電気を切っても記録画失われない半導体メモリー(フラッシュメモリー)を使っている。著作権保護機能など、記録以外の機能を組み込んだものもある。

メモリーカードにはいくつかの規格が在り、それらは互換性がない。現在までに以下のものが登場している。

  • スマートメディア
  • コンパクトフラッシュ
  • メモリースティック
  • SDメモリーカード
  • xDピクチャーカード

以前はデジカメのメーカーごとに異なっていて不便な状態にあったが、現在(2009年以降)は、SD カードがほぼ標準になったと言える状況にある。データ転送が高速なことから、一眼レフなどではコンパクトフラッシュを利用できるものもある(SD と CF の2種類が利用できるようになっているものもある)。

携帯電話は SD カードを小さくした microSD や miniSD を使用するものがほとんどであり(いずれもアダプタを付けることで SD カードとして利用できる)、パソコンにも SD メモリーカードの読み取りスロットが搭載されるようになった。またゲーム機なども SD メモリーカードを採用しており、メモリーカードに関しては SD がほぼ業界標準(デファクト・スタンダード)になったと言っても良いだろう。

SD カードはデータの転送速度で CF には劣るとされてきたのだが、高速・大容量の規格(SDHC, SDXC)が登場して、速度・容量ともに上がってきている(それでもコンパクトフラッシュの最高速のものには及ばないようだが)。

*規格による容量の制限
SD は最高で 2G
SDHC は最高で 32G
SDXC は最高で 2T (2048G)

規格は上位互換となっており、たとえば、SDHC 対応の機器では、SD は使えても、SDXC は使えない。SDXC 対応の機器ではすべてが使えるが、SD にしか対応していない機器では SD しか使えない。

SD カードは著作権保護規格であるCPRMにも対応している。このため携帯電話における着うた、着うたフル、ワンセグ放送の録画再生などにも用いられる。

また、SD カードに無線LANの機能を組み込んだもの(記録したデータをそのまま無線LANで転送できる)も登場しており、東芝が規格団体を立ち上げる。

なお、メモリーカードや USB メモリなどは、フラッシュメモリと呼ばれる半導体が使われている。このフラッシュメモリは不揮発性の半導体メモリで、電源を切ってもデータが保持されるものである(パソコンの通常のメモリー、RAM と呼ばれるものは電源が切れるとデータも消える=揮発性)。フラッシュメモリーの記憶素子は、原理的に消去・書き込み回数に限界がある。メモリーカードなどは同じ箇所を続けて使わないなどの工夫によりすぐには限界に達しないようになっているが(数万回以上の書き換えに耐える)、寿命があるものだということには注意が必要である(書き換えを行わなくても最長で数十年が寿命とされる)。

最近ではデジカメで記録を残したり、証拠として保存することも増えてきたので、一度書き込んだデータは編集できない(改ざんできない)かわりに、データの記憶保証期間を長くしたものが、警察などの特殊な用途向けのメモリーカードとして販売されている(対応したデジカメでしか使えない)。

画像ファイル形式

●JPEG:

  • 通常、デジカメは、ファイルとして画像データを記録する際に画像を圧縮して記録する。圧縮のデータの形式として普及しているのが JPEG である。この形式は、インターネットのホームページの画像データの形式などで広く用いられている。
  • JPEG のファイル形式であれば、どんなパソコンでも扱えるといってもよい。メモリーカードから直接画像ファイルを取りだせる(アダプターを使ってカードをパソコンに繋ぐ)
  • JPEG の画像は画像を圧縮する際に画質が劣化する(非可逆圧縮)。圧縮率を高くするとデータのサイズは小さくなるが、画質は悪くなる(微妙な色の違いが消えてしまう)。このため、デジカメでは、JPEG に変換するさいの圧縮率を選べるようになっている。

●TIFF:

  • 圧縮しない画像ファイルの形式としては TIFF 形式がある。これもパソコンの画像処理ソフトなどはたいてい扱えるので、画質を一切落とさずにパソコン上で利用したい場合などは TIFF 形式で保存するとよい。ただし、圧縮を行わないので一枚の写真のデータのサイズが大きくなる。また、TIFF 形式での保存には対応していないデジカメも多い。

●RAW:

  • 一眼レフタイプの高級機では撮像素子で捉えたデータをそのまま記録した RAW 形式のファイルで保存ができるようになっているものもある。この RAW データは、そのままでは写真のデータにはなっておらず、パソコン上で数々の画像処理(一般に現像処理と呼ばれる)を行って、初めて画像データとして使えるものになる(通常はデジカメが行っている画像処理を自分で行う必要があるということ)。データのサイズもかなり大きいので、RAW 形式で保存するときには、容量が大きいメモリーカードを使わないと、一枚のメモリーカードに数枚しか撮影できないということが起きてしまう。また、メーカーによってデータ形式が異るので、画像処理ソフトで扱いたくてもソフトの方が対応していなければ扱えない。そのため、RAW 形式が利用できるデジカメは、RAW 形式のデータをパソコン上で使う為のソフトウェアを提供している。

DCF

DCFとは、主としてデジタルカメラの画像ファイルを、関連機器間で簡便に利用しあうことを目的として規定された社団法人日本電子工業振興協会(JEIDA)(現在は社団法人電子情報技術産業協会(JEITA))の規格『Design rule for Camera File system』の略称。現在、日本国内ではほぼすべてのデジタルカメラが対応しており、国際標準化のためのISO 12234-3 として規格化されている。

具体的には、メディアは FAT をファイルシステムとして使うこと、指定された名前のディレクトリ(フォルダ)の中に指定された名前の形式でファイルを収めることなどが定められている。

この規格に従ってデータを保存するようになっているデジカメであれば、たとえば、A社のカメラで使ったメモリーカードを、初期化せずにB社のカメラでもそのまま使い続けられるとか、パソコンにつなぐとデジカメのデータとして認識されてちゃんと取り出せる、あるいはカードから直接印刷できるプリンターが利用できる等、多くの機器の間で、データの受け渡しが簡単に行える。

また、この DCF に従って画像を記録する際の標準の画像フォーマットとして Exif という規格がある。

Exif(エグジフ)

先に述べた DCF で標準フォーマットとして採用されている画像フォーマットの規格。Exchangeable Image File Format の略称。JPEG や TIFF 形式の画像フォーマットを拡張したものになっている。1995年に制定され、現在では、DCF とあわせてほぼすべてのデジカメが使用している記録フォーマットである。

Exif の特徴は2つ。一つは撮影に関する情報を記録すること、もう一つはサムネイルという確認用の縮小画像も含めるようになっていることである。

撮影に関する情報として、使用したカメラの機種、設定(絞り、焦点距離、シャッター速度など)、画像の画素数や圧縮などの画像に関する情報などがある。それらがヘッダと呼ばれる部分に記録される。

最近では、GPS 内蔵あるいは GPS ユニットを付けたカメラで撮影した写真に、撮影場所の情報を記録できるようになっている(GPS で得た位置情報のことをジオタグと呼ぶ)。電子コンパスを搭載したものでは撮影した向きまで記録されるものもある。また、シーン設定の情報を記録しておき、印刷などの際にそれを参照する(たとえば夜景モードで撮影された写真は、かってに明るさを上げたりせずに暗いまま印刷する)ようになってきている。

サムネイルは、パソコンのデスクトップで実際の画像を確認したりするときに使われるもので、160×120ピクセルに縮小した画像データが一緒に追加されるようになっている。

このように、Exif では、画像データ+撮影情報+確認用画像が一つのファイルに納められるのである。

業界・動向など

出荷台数

一般社団法人カメラ映像機器工業会(CIPA)の発表によれば、近年のデジタルカメラの出荷台数は以下のように推移している。()は国内向け

  • 2004年 6000万台 (850万台)
  • 2005年 6500万台 (840万台)
  • 2006年 7900万台 (940万台)
  • 2007年 1億40万台 (1100万台)
  • 2008年 1億1900万台 (1100万台)
  • 2009年 1億590万台 (970万台)
  • 2010年 1億1210万台 (1060万台)
  • 2011年 1億1552万台 (950万台)
  • 2012年 9813万台 (915万台)
  • 2013年 6283万台 (793万台)
  • 2014年 4343万台 (578万台)

近年はレンズ交換型の出荷が伸びてきている。

近年、とくにコンパクト型の価格低下が激しくなっており、利幅が薄くなってきている。1000万台を生産するメーカーでなければ生き残れないと言われる中、PENTAX (HOYA が所有)がリコーに買収されるなど、業界再編の動きも出てきている。

最近の技術的な動向

撮像素子の画素数の増加は相変わらず進んでおり、現在では 1000万画素を越えるものが増えてきている。また、撮像素子の改良によって感度を高めたものや、高速撮影を可能にしたものも登場している。

こうしたハード的な改良以外に、ソフトウェア的な機能を高めたものが増えてきている。たとえば、高速撮影が可能になったことで、シャッターを押す前後の映像も記録しておいてタイミングを逃した時にも遡って映像を選べるもの、あるいはほぼ同時に複数の設定で画像を記録しそれを合成することで画質を高めるものなどがある。また画像解析の技術によって人間の顔やペットの顔を自動的に認識してピントを合わせたり、笑顔の瞬間に自動的にシャッターが切れたり、撮影時に目をつぶった場合には知らせてくれるもの、あるいは撮影時の状況や映像を判断して最適な設定に自動的にするものなどが出てきている。

また、ハイビジョン画質で動画を撮影できるものも増えてきている(ケータイの中にもハイビジョン画質で動画を撮影できるものもある)。

出荷台数の推移でも触れたように、最近ではレンズ交換式の出荷が増えてきているのだが、これまでの一眼レフ方式とは別の「ミラーレス一眼」と呼ばれるレンズ交換式カメラが登場した。

一眼レフと呼ばれるものは、レンズからは入った光が、撮像素子の前におかれたミラーで反射されてファインダーへ届き、ファインダーで絵を見ながら撮影できるようになっているものである。シャッターを押すとミラーが跳ね上がって撮像素子に光が届き、画像が記録される。実際に撮影される画像をファインダーで確認しながら撮影できる。

それに対して、最近の「ミラーレス一眼」と呼ばれるものは、ミラー(反射板)がなく、レンズから入った光はそのまま撮像素子に届き、それが背面の液晶画面に表示される。液晶画面を見ながら撮影を行うという、通常のコンパクトデジカメと同じ要領で撮影するわけである。レンズが交換できるようになったコンパクトデジカメといってもよいが、撮像素子が大きなものが使われており、画質が良い。常に撮像素子に光が届いているので動画撮影にも向いている(一眼レフのカメラで動画撮影が可能なものは、動画撮影時は反射板をあげて撮影するようになっている)。