「情報システム」は、福井県立大学・経済学部で田中求之が担当している、経済学部専門科目です。この授業は、私たちの身の回りにあふれている様々なデジタル情報機器(デジタル家電)について、原理・技術および業界の動向や商習慣(制度)などを取り上げて解説しています。この授業を通じて、情報のデジタル化の意味や意義、あるいは私たちの生活との関わり、さらには人間自体の情報処理(知覚・感覚)との繋がりなどを理解してもらいたいと考えています。

このページに記されているのは、講義のうち、原理・技術についての解説のために田中が作成した講義ノートです。授業では業界の現状、あるいはその時々のニュースの解説なども行っていますが、それらは載せていません(時間が経つと意味をなさないため)。

さらに、工学部向けの授業ではないため、正確さよりも分かりやすさを優先したものになっています。田中の理解が誤っていたりタイプミスをしている箇所も残っていると思います。授業の受講者以外の方がこのページをご覧になる際は、こうしたことを留意の上、お読みください。

その他

講義では取り上げなかった話題、あるいは過去の講義では取り上げていたが、現在は取り上げていないトピックについて、講義した当時のノートを掲載しておきます。

ファイル交換ソフト

データ共有とコンピュータネットワーク

コンピュータをネットワークで繋いでデータ通信を行うということは、基本的にデータを共有するということなのである。たとえば、電子メールのことを考えてみよう。Aさんがメールを書いてBさんに送ったという場合、従来の紙の手紙同様に、AさんからBさんに文書データが移されたように考えてしまう。しかし、Aさんのメールソフトの送信済みメールのところには、Aさんが書いて送った文章がそのまま残っている。つまり、Bさんは、Aさんが書いた文章のデータのコピーを受け取ったことになる。この結果、AさんのコンピュータとBさんのコンピュータは、同じ内容の文章のデータを共有することになるわけだ。

コンピュータのネットワークでは、データを送信したからといって送信元から消えてしまうことは無い。つまり、つねにネットワークでやり取りされるデータは、コピーされたものであるといっても良いのだ。分身を配付するのがコンピュータネットワークなのである。

ファイル交換ソフトの特徴

メールや Web (ホームページ)の場合であっても、根本においては、コンピュータ間のファイル(データ)共有であり、ファイル交換なのである。では、いわゆる「ファイル交換ソフト(ファイル共有ソフト)」と言われるものの特徴は何かといえば、ネットワークを介して不特定多数のみも知らない人間と匿名的にデータが交換できるということにある。また、単にデータを受け取るだけではなく、自分からも提供できるということにある。

サーバ=クライアント方式

先に述べたように、Web であっても、基本的にはファイル交換という側面を持っている。また、インターネットでは FTP というファイル交換のサービス(と仕組み)が古くからあって、ソフトウェアの配付などで今でも利用されている。こうしたこれまでのサービスとファイル交換ソフトの大きな違いは、配布元と利用者(ダウンロードする人)が非対称的な関係になっているかどうかということと、配布元をどのように特定するかという方法にある。

たとえば Windows を利用する場合には、Windows Update でマイクロソフトから修正ファイルを入手して自分の Windows を最新の状態にしておく必要がある。この修正ファイルはマイクロソフトから世界中の Windows ユーザーに配付されており、利用者は皆マイクロソフトのサーバからダウンロードする。このように、ファイルを提供するコンピュータ(サーバ)と、それをダウンロードするコンピュータ(クライアント)がはっきりと分かれているようなデータ共有(配付)の方法を、サーバ=クライアント方式と呼ぶ。

データを持っていて配付するコンピュータが決まっていて、そこから皆がデータをダウンロードする。ちょうど、学生はみんな教務課に行って授業に関する資料をもらう、そういう感じである。ようするに集中管理である。

この方法の場合、ダウンロードするべきコンピュータがはっきりしていること(どこから入手する/したかはっきりしている)からデータの身元がある程度あきらかになるという安心が得られることがある。また、サーバのコンピュータには利用者(ダウンロードしたコンピュータ)の IP アドレスなどの情報が記録されるので、利用者のある程度の捕捉が可能なことなどがある。しかし、大量のクライアントが一度にダウンロードするのに備えてコンピュータの能力やネットワークの回線の調整を行ったりといった、管理のコストもそれなりにかかる(特に規模の大きなサーバの場合)。

このようなサーバ=クライアント方式ではない方法でファイル交換を実現するところに、ファイル交換ソフトの最大の特徴がある。

P2P (Peer to Peer)

ファイル交換ソフトが用いる方法を P2P (PtoP) という。これは、個々のコンピュータがデータを持っていて、相互に直接接続して交換するという方法だ。個々のコンピュータが互いにデータの提供者(サーバ)と利用者(クライアント)の両方を演じる。P2P の P は Peer の略であり、Peer とは「対等」ということである。お互いが対等にサーバとクライアントになるというわけだ。

試験前に授業のノートを友人づてに探してコピーをもらう、そういう感じでデータ交換するものだと考えてもらえれば良い。自分が持っているノートはコピーして渡すし、持っていないものはコピーしてもらう。また必要なノートを探すのは友人やクラブの先輩・後輩などを通じて、人づてに探していく。これを同じような仕組みをネットワークで実現したものが P2P であり、その仕組みでファイルの交換を行うのがファイル交換ソフトなのである。

●P2P の2つのタイプ

P2P でファイル交換を行うソフトにおいては、ファイル(データ)の在りかをどのように管理するか(必要なデータの在りかをどのように見つけるか)、その方法の違いから2つのタイプに分かれる。P2P では、どこコンピュータが必要なデータを持っているのかを見つけ出して、そのコンピュータと交信を行ってデータをコピーすることになるのだが、情報の在りかを見つけ出すのが鍵になる。

一つは中央サーバ型(HybridP2P)といわれるものだ。これはデータ自体の交換は個々のコンピュータが直接行うが、データのありかは互いに中央サーバ(インデックスサーバ)に登録しておくというものだ。個々のパソコンは、中央サーバで公開されている他のコンピュータの持ち物リストの中から自分が欲しいものを探しだし、そのデータの持ち主のコンピュータと直接交渉する、という手順でデータを入手する。また自分の持ち物リストを公開しておいて、希望者からコンタクトがあれば直接コピーさせてあげるという形で配付する。

この方法の場合、データのありかを探すのは簡単だというメリットがあるが、互いに何を公開したのかという記録が残ることとのように、ユーザーに関する追跡可能な痕跡が残るものになっている。また、中央サーバーが停止したらファイル交換ができないという、情報が集中していることのデメリットがある。

純粋型(PureP2P)と言われる P2P は、ファイル(データ)の在りかも、互いのコンピュータづてに探していくというもので、完全な分散ネットワークを構成する。P2P の本来のあり方はこの形なので純粋型といわれる。

自分が希望するデータを持っていないか、ネット上で自分が繋がっている他のコンピュータにと問い掛けると、その問い掛けがバケツリレーされていって、もし希望するデータを持っているコンピュータが見つかった場合には、その情報が伝わって帰ってくる。また、データ交換も、バケツリレー式に人づてに行われることで、直接に持ち主のコンピュータとは交渉しなくて済むようなになっているものもある。

まさに人づてに授業ノートのコピーを手に入れようとするのと同じことをネットワークで行うわけである。

データの在りかを見つけ出すのに時間がかかるなど、効率は良くない部分はあるが、完全な分散ネットワークのために柔軟であること(特定のコンピュータが故障したらアウトといったことがおきない)、また匿名的な利用が可能になるといった特徴がある。

主なファイル交換ソフト

Napster

  • 1999年1月に登場
  • MP3 の音楽データの交換ソフト
  • 中央サーバー型
  • 企業化してビジネスチャンスを探ったが著作権侵害訴訟に敗れ2002年6月に破産
  • Roxio に買収されて、2003年10月から有料音楽配信サービスとして再起

WinMX

  • Napster 互換のファイル交換ソフト(音楽データに限らない)
  • 純粋型と中央サーバー型の両方の機能
  • 有志による日本語化(メニューの日本語化と日本語検索)が行われ、日本でも人気
  • 2001年11月にユーザーの逮捕

Winny

  • 2002年5月に登場
  • 純粋型
  • 転送と暗号化による匿名性
  • 2003年11月ユーザーが逮捕される
  • 2004年5月作者が逮捕される

ファイル交換ソフトの問題点

●著作権問題

ファイル交換ソフト自体は違法ではないが、著作権に違反する行為を簡単に誰もが行えるようになっているところが問題。また、P2P というネットワークの性質上、どれくらいの違法行為(違法コピーの交換)が行われているのか実体を完全に把握するのが難しい。

1999年の著作権改正によって、実際にファイル交換を行ったかどうかに関係なく、ファイル交換ソフトで違法コピーのファイルが送信可能な状態になっているだけで著作権侵害の罪に問えるようになった(公衆送信権侵害)

Winny 作者逮捕は著作権侵害幇助(ほう助)とされているが…

●プライバシーの侵害回復の困難

Antinny ウイルス(暴露ウィルス)によって、勝手に自分のパソコンのデータが交換ネットワークに流出するということがおきた。このウイルスによって、自分のパソコンに保存してあった個人的なデータが勝手にネットワークに流出するという被害がおきたのだが、P2P のネットワークでは、いったんネットワークに流出してコピーされてしまったデータを「取り消したり」「回収したり」することはできない。また、流出元を確実に捕捉することが困難になっている。このため、深刻なプライバシーの侵害(盗撮された画像やムービーの配付等)などがおきても、対策がとれないという点が問題にされている。

●トラフィックの問題

分散ネットワークゆえに、情報の在りかを求める信号などが大量にネットワークを流れることになる。また、画像などのサイズの大きなデータが大量にダウンロードされるようなことがおきると、回線を圧迫して、他のユーザーに迷惑をかけるということがおきる。このためプロバイダではファイル交換ソフトの使用を制限したりするなどの対策をとるところも出てきた。

ただし、常時接続の回線契約を結んだユーザーが、その回線を使ってどのようなことを行おうとも、それは自由であり(契約の内容にサービスの制限を加えることが記されていなければ)、その行為によってプロバイダの通信に影響が出るのであれば、プロバイダが回線を太くするなどの対策をとるのが、本来の解決策である。このてんで、プロバイダが通信の中身に踏み込んで制限を加えることを問題とする意見もある。

Winny による情報流出事件

●情報流出の仕組み

昨年あたりからマスコミが盛んに報じるようになった Winny よる情報流出だが、これは正確には Winny というソフトが引き起こしているのではなく、Winny に感染した Antinny というウイルス(個人情報を勝手に外部に流出させるので暴露ウイルスと呼ばれる)が原因である。

この暴露ウイルスは2004年3月には現在問題になっているような事態を引き起こす可能性があるウイルスとして、様々なところが警告を発していた(Anitinny.G)。現在になって騒がれているのは、ウイルスの感染に対する処置をとらないまま Winny を使っているユーザーが増えたことと、その結果、多くの情報が流出していることが確認されたからである。また、大手企業や政府・自治体などの情報流出をマスコミでは取り上げているが、報道されているのは流出している情報のごく一部についてであり、実際は、相当の個人情報が流出してしまっている。

Winny のようなファイル交換ソフトは、個人が互いにファイル交換を行えるようにするものであるが、他人に公開するファイル(データ)はユーザーが指定したものに限るようになっている。通常であれば、ユーザーが操作ミスを行わない限り、自分のパソコンに入っている情報が勝手に他人の手に渡る(つまり個人情報が流出してしまう)ことはない。

しかし、暴露ウイルスに感染してしまうと、ウイルスがパソコン内のデータを勝手に公開してしまうのである。このため、ユーザーが気がつかないままに、パソコン内の情報が流出してしまうわけである。さらに、ウイルスは自分自身の複製も公開データに紛れ込ませ、他人の Winny に感染を試みるようになっている。

●被害の深刻さと拡大の原因

Winny の場合には、いったん流出した情報を削除する(ネットから入手できないようにする)のは、かなり難しいということがあり、これが事件を深刻なものにするとともに、更なる被害(Winny への暴露ウイルスの感染)を広めることを引き起こしている。

Winny は、先に説明したように Pure な P2P のファイル交換ソフトで、データを交換する際には、データを持っていたパソコンから直接ダウンロードするのではなく、中継に入ったパソコンにもデータがコピーされるようになっている。このため、いったん交換が行われたデータは、その中継に入ったパソコンにも残り、それがさらに他のパソコンへと渡されていくようになっている。また、お互いに匿名のままでファイル交換できるので、誰が情報を入手したかを特定することはできない。

このような仕組みになっているため、いったん流出してしまった情報を完全に削除するためには、すべての Winny を調べて中継の際に作られたコピー(キャッシュ)を削除するしかない(それでも入手した個人が別に保存したものは消せないが)。数十万人が使っているソフトでこれを行うのは、かなり難しい。サービスとして請け負う会社も出てきているようだが、流出が判明した早い段階でないと対処できないようだ。

このため、過去に流出してしまったデータは、そのほとんどが、今でも Winny で入手できるようになっている。最近になって情報流出が報じられた事例であっても、流出そのものは過去に起こっており、そのデータが今になって確認されたというものも少なくないと考えられる。

さらに問題を大きくしているのは、こうした流出した他人のデータを覗き見してみたいと思って Winny を不用意に使い始めるユーザーが少なからずいた(いる)ということである。これが感染を広げた原因の一つであると考えられる。

●なぜ企業のデータが流出するのか

Winny のウイルスによって情報流出が起きることは 2004年3月の時点で分かっていた。そのため、大企業などでは自社の情報ネットワーク内のパソコンが被害に遭わないための対策などを施していたところも少なくない。また、実質的に違法なデータを入手することを目的に使用されるソフトなので、自社内のパソコンに Winny がインストールされないように管理なども行っていた筈だ。しかし、それでも企業のデータが流出が起きてしまったのは、会社のパソコンを自宅に持ち帰って使用したり、あるいは個人が私物のパソコンを会社の仕事に使用するといったことが行われていたからである。

Winny の事件に限らず、企業の情報流出は、企業内部の人間が、パソコンを持ち込んだり、持ち出したりすることが原因であることが多い(会社のパソコンを車に置いておいて路上荒らしに盗まれる、あるいは電車に置き忘れてしまう等)。

こうしたパソコン使用の公私混同が企業や自治体などの情報が流出してしまう原因にはある。

多くの業務でパソコンを使用するようになってきていながら、職場で一人に1台のパソコンを支給するのはコスト(管理の手間なども含む)がかかる。このため、企業は、こうした私物パソコンの使用を「認めてきた」ところがある。また、パソコンで仕事をせざるをえないため、自宅に仕事を持ち帰るにはパソコンごと持ってかえるのが「効率的」であると考えるのも理解できるだろう。こうした社会的要因が今回の事件を深刻にした背景にある。

●対策

Winny のウイルスはウイルス対策ソフトによって発見し除去できる。しかし、新しいもの(変種、亜種)にはすぐには対応できない。また、現在、Winny で出回っているファイルにはウイルスが含まれるものが多く、ウイルスチェック機能を有効にしておくと、ウイルス対策ソフトがデータの転送を「邪魔する」ことが多く、「チェック機能をオフにして使いたくなる」という状況がある。

このため、「Winny は使用しない」というのが現実的な対策であり解決策である。

また、2006年3月になって Winny のソフト自体にセキュリティ上の脆弱性があることが発見され、この脆弱性を悪用されるとパソコンが乗っ取られる危険があることが判明した。しかし、Winny の作者は逮捕されて裁判中であり、Winny を改良する(危険性を取り除く)ことはできない状況にある。また、別の人間が危険を取り除く作業を行ったら、その人物も Winny の作者と同じ容疑で逮捕される可能性がある。このため、Winny 自体がウイルスに強くなったりセキュリティの脆弱性がなくなるものになることは、現状ではありえないと考えられる。

こうしたこともあるので、「Winny は使わない」というのが、現実的な対策なのである。

カラーマネジメント、プリンター

色が違う

デジタル画像ではカラーの情報はRGBの3色の成分の強さを数値化したものになっている。しかし、私たちの目に入ってくる画像の色は、この数値化されたデータを元にモニターやプリンターが色を表現したものである。このため、同じデータ(例えば鮮やかな赤を示す R=255,G=0,B=0 という数値)であっても、表示や印刷に用いる機器によって、目に映る色は異るということが起きる。

家電店のテレビ売り場に行くと、何台ものテレビが同じ番組を映していることがある。このとき、テレビの機種によって微妙に色合いが異るのに気がつく筈だ。

カラースペースの違いがある

なぜこのようなことが起きるのか? それは画像を表示したり印刷したりする機器によって表現できる色の範囲(色空間、カラースペースという)が異っており、人間が認識できるすべての色を表現できるわけではないこと、機器の特性や画像を見ている環境(たとえば日光、蛍光灯、白熱灯などの光源の種類によって見える色は異る)、また色の表現方式の違いなどが関係している。

たとえば、R=255 のデータは赤成分が最大、つまり鮮やかな赤を示す。しかし、この鮮やかな赤として、どの色を位置づけるか(全ての色を取り込むことはできない)によって、R=255 が、目に見える色としてどんな色をさすのかは異るわけだ。

モニターなどでは同じメーカーの同じ製品であっても微妙な個体差があったりする。

また、OS によってモニターのガンマ標準値と呼ばれるものが異るので、同じ画像が Mac では暗くて地味に見えたり、Windows ではコントラストがどぎつい絵に見えたりするということが起きる(Mac はガンマ標準値 1.8、Windows は 2.2)(ガンマというのは、非常に大ざっぱに言うと、入力信号と出力との関係を決めるもの)。

カラーマネージメントシステム

このように、様々な要因によって、同じデータを表現していても、人間の目には色が異って見えるのである。それゆえ、デジカメで写した写真を印刷した場合、デジカメのビューで見たもの、あるいはパソコンで表示したもの、印刷したものが異ってしまうのは仕方がない(完全に一致させるのは難しい)ことではある。

しかし、それでは不便である。たとえば、印刷物の編集をパソコンで行う(いわゆる DTP)際に、モニターで色を調整しても、実際に印刷してみるまで「本当の色」がわからないのでは仕事にならない。

そこで、使用する機器の特性や個性に関係なく色をただしく扱える(事実上、問題がない品質で)仕組み(簡単に言うとモニターで見たままの色で印刷されるように機器の間で色の処理を調整する仕組み)が考えられた。コンピュータなどで扱う色を、さまざまな機器で違いがなくなるように管理することをカラーマネージメントという。そしてその技術や使用する道具をカラーマネージメントシステム(CMS)と言う。

プロファイル

具体的な方法としては、モニターやプリンターなどの機器のそれぞれに、その機器の色の表現の特性を記したプロファイルというものを持たせる。そして、色を扱うさいには、個々の機種のプロファイルを参照することで、表現される色の違いを抑えるのである(カラーマッチング)。色のデータを、いったん絶対的な色信号(デバイスインデペントカラー=機器に依存しない色)に変換し、それを個々の機器の特性・個性に合わせて調整するようになっている。

汎用のプロファイルとしては「ICC プロファイル」と呼ばれるものが使われている。これは「International Color Consortiumi=国際カラー・コンソーシアム」標準規格で、使用する OS などに依存しないものになっている。それゆえ、ICCプロファイルが付いた機器であれば、データを処理するコンピュータの OS には関係なく、そのプロファイルを扱えるカラーマネージメントシステムを用いることで、一貫した色の表現が可能になる。

OS に搭載されているカラーマネージメントシステムとしては、AppleMacintosh で採用されたColorSync、Windows95で採用された MicrosoftImageColorMatching などがある。

またプリンターやスキャナなどの製品には、その製品のプロファイルが付属し、パソコンにインストールできるようになっている(ホームページから入手できるようになっているものもある)。

ただし、OS がカラーマネージメントの仕組みを持っているからといっても、ソフトウェアがその仕組みをきちんと利用していなければ意味がない。Photoshop に代表される高度な画像編集ソフトなどはカラーマネージメントが行えるようになっているが、そうなっていないソフトもある。

プリンターの種類

家庭用として現在販売されているプリンターは2種類に分かれる。レーザープリンターとインクジェットプリンターである(かつてはサーマル式やドットインパクトのものがあった)。

インクジェット(バブルジェット)
インクの粒を紙に吹きつけていく
レーザー
トナーという非常に細かい粒子を紙に熱で焼き付けていく
サーマル
熱を使って専用用紙を変色させたりリボンを転写する
ドットインパクト
小さな針でリボンをたたいて紙に打ち付けて印字

インクジェット(バブルジェット)は、カラーのインクの粒を紙に吹きつけていくことで印刷を行う。色の三原色=シアン(青緑)、マゼンダ(深紅)、イエロー(黄)に黒を加えたもの(この組み合わせを CMYK と呼ぶ)のインクの合成によってカラーを出力する。最近のインクジェットは、写真並の出力を得るために、さらにインクの種類を増やしているものもある。

印刷物の場合、インクは光を吸収するため、色を表現する場合には、特定の色を吸収するインクを組み合わせることで色を表現する。上記の色の三原色のそれぞれのインクは、シアンが赤を吸収、マゼンダが緑を吸収、イエローが青を吸収する。そこで、たとえば、青色を印刷で表現する場合には、シアンとマゼンダを混ぜたインクを使う(光の3原色のうち、赤と緑が吸収されることになり、結果として青が残こるので、人間の目には青に見えることになる:RGB - R(シアン) - G(マゼンダ) = B という引き算になるわけね)。

レーザー式は印字速度が速く、印刷物のにじみがないといった特徴があるので、文書の印刷を主とした利用がなされている。価格も安くなってきており、個人でも購入できるものになってきた。また、最近ではカラーのものもある(色の3原色に分かれたトナーを使う)。

プリンターの印刷の肌理の細さは、解像度で示される。先に述べたように1インチ(=2.54cm)についていくつの点を打つかを表した dpi (dot per inch) によって表示される。この数値が高いほど、細かな印刷能力があることになる。

最近では、企業だけでなく個人の家庭でもネットワークを組むことが多くなってきていることから、パソコンに直接つなげるのではなく、ネットワーク経由で接続して印刷する、ネットワーク・プリンタも増えてきている(両方に対応しているものもある)。また、スキャナ(画像取り込み装置)の機能等が付いた複合型もある。

用紙サイズについて

日本で用いられる紙のサイズにはA版とB版とがある。いずれも横と縦の長さの比が1対√2になっている。それゆえ半分に折っても比が変わらないようになっている。また0版が最大で、面積が半分になるにつれて(半分に折っていくにつれて)数値が1ずつ増えていく。A4版の半分のサイズの紙はA5版になるし、B5の倍の大きさの紙はB4である。

かつては書類はJIS(日本規格協会)の定める規格であるB版の紙が使われることが多かったのだが、最近はISO国際規格であるA版の方が使われるようになっている(かつてはB5の書類が多かったのだが、今はA4になってきている)。

印刷の解像度

デジタル画像を印刷したときに、それがどれくらいの大きさになるのかは、プリンターの解像度(と印刷時の設定)による。最近のインクジェットプリンターはカタログの数値上は 4800dpi といった高解像度になっているが、この解像度は必ずしも印刷する画像の解像度にはならない。

プリンターの解像度は、プリンターが1インチの間にどれだけの点を打つ(印刷する)ことができるかを表している。白黒のレーザープリンターの場合は、プリンターの解像度と印刷される画像の解像度は同じになる。ところが、カラーのインクジェットプリンターの場合は、プリンターの解像度が印刷される画像の解像度にはならないのである。

インクジェットのカラープリンターの場合は、一つの画素を複数の点で表現するようになっている。つまり一つの点にインクを重ね合わせるのではなく、色の濃さを点の密度で表したり、異った色の細かな点の集まりと色を合成するなど、複数の点の集まりとして画像の一つの画素に対応するものを表現するようになっているのである。

このため、実質的な解像度(実効解像度という)は 200dpi~360dpi 程度になっているのが普通である。

カラーの画像を印刷する場合には 240dpi 以上の実効解像度であれば、普通の人間の目には違いがわからないという。白黒のイラストやロゴなどの場合は 1200dpi が必要と言われている。いずれにせよ、最近のプリンターであれば、何も考えずにただ印刷しても、かなりの品質で印刷ができるようになっている。インクジェットでの印刷の場合には、むしろ用紙をちゃんと選ぶことの方が重要なくらいである。

ただし、いくらプリンターの性能がよくても、画素数の少ない写真を大きな紙に印刷したりすると、印刷される絵は画素のギザギザがわかるような低品質のものになってしまう。そういう意味では、印刷したい紙のサイズで最低でも 300dpi の解像度が確保できるだけの画素数の画像を使う必要がある。

具体的な例で考えてみる。今、いわゆる写真のサイズの用紙にデジカメで撮った写真を印刷したいとする。我々が写真のサイズと言っている用紙はL版と呼ばれるもので、12.7cm × 8.9cm の用紙である。この用紙に写真を解像度 300dpi で印刷するとしよう(余白などは考えないとする)。

12.7cm は 12.7/2.54 = 5.00inch、8.9cm は 8.9/2.54 = 3.50inch、である。それゆえに、もしこの用紙に 300dpi で印刷するとすれば、横は 5*300= 1500 ドット、縦は 3.5*300 = 1050 ドットが必要になる。つまり、1500 × 1050 ピクセルの画像を用意すれば、L版の用紙に 300dpi で印刷できることになる。

では、このサイズの画像を撮影するのに必要なデジカメの CCD の画素数はどれくらいになるかといえば、1500*1050= 1575000 つまり、約 157 万画素以上の画素の CCD を搭載しているカメラであればよいことになる。つまり、200万画素のデジカメであればOKということだ。

もちろん、印刷の仕上がりは解像度以外の要因にも左右される。また、印刷に使用するソフトウェアが画質の粗さ(画素数の少なさ)を目立たないように補正して印刷してくれたりもするので、L版に普通に見てきれいと思える仕上がりで印刷するのに必ず200万画素のデジカメが必要というわけではない。しかし、なるべく奇麗に印刷したいのであれば、用紙サイズと画像のサイズ(つまりは撮影に使うデジカメの画素数)を考慮する必要がある。